高齢化につれて増えてきている腰部脊柱管狭窄症
高齢化社会の進行により、増えてきた病気の一つが腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)です。馬尾神経型と神経根型の2タイプがあります。
馬尾神経型
腰部脊柱管狭窄症のうち馬尾神経型になると、歩き始めて400m程すると、腰から両殿部にかけて違和感と痛みが発生して歩けなくなります。立ち止まって前かがみになるか、ベンチに座ると楽になるのが特徴的な症状です。自転車に乗っている時やスーパーで買い物カートを押している時は前かがみになっているので症状が出ません。この症状を間歇性跛行(かんけつせいはこう)と呼びます。脊髄(特に馬尾と呼びます)が椎間板の変形と黄靭帯と言う後方の靭帯によって、前と後ろから圧迫されるのが原因です。
MRI検査をすると、脊柱管(馬尾神経の入っている管)が、前方(お腹の方)と後方(背中の方)から圧迫されているのが良く分かります。ひょうたん型に括れています。椎間板は何か所もあるので、括れが幾つも見られます。
馬尾神経型は徐々に悪化していく傾向があり、立っていても痛みと痺れが有る人は手術した方が良いと考えられます。特に歩いて200mほどで症状が出るようになるくらいであれば、早めに手術した方が良いと思います。400mで手術した方が結果良いと言われていますが、患者様の希望が最優先されます。
とは言え、あまり遅れると結果が良くないので、適当な時期に手術をお勧めしています。手術時期のアドバイスが出来るのは整形外科だけだと思います。実際に手術をしてきた経験が生きてくるからです。手術の進歩により骨を削る量が減っており、術後もスポーツができると思います。
神経根型
神経根型の方は下肢が痛くなって歩けなくなるという点では馬尾神経型と同じです。片方の下肢が痛くなる事が多いですが、両方が痛くなる人もいます。神経根型は、骨の変形によって神経が脊椎の出口で圧迫されて出てくる症状で、腰のヘルニアに似ています。保存的治療に反応して良くなっていくので、ヘルニアの治療と同じで良いかと思います。
また、腰部脊柱管狭窄症に似た病気に慢性動脈閉塞症が有ります。同じように、歩いているうちに足が痛くなって、立ち止まると治ります。血管の閉塞具合を調べるために、MRA(MRIで血管を調べる事)を撮ると閉塞の程度と場所がわかり、バイパス手術や、ステント手術の助けになります。高齢者の中には、腰部脊柱管狭窄と慢性動脈の閉塞と両方を起こしている人もいます。動脈は手術をせずに局所に注射することにより、改善する方法も有ります。年を取ると言う事は、色々な病気と闘い付き合って行くことでもあります。その際に私達医師が患者様をサポートします。
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